伊藤 阿二子 ひと日が終り 投げ出すように 草臥れた身を横たえると 街の音が 今夜も耳に甦る 呼吸を整えながら 海鳴りに似た音を聞く 記憶の底から立ち上がってくるものたち 遠い日の 空と街並み 名前も覚束ない 懐かしい人たちの姿と顔に ここに居るよ と 呼び掛けようとする 身の半分は眠りにつき 声が出ない 手を振ろうにも 腕が上らない 答えの出にくい事柄は傍らに押しやって 明るい方角に目をむけて 日向ばかりを見て過ごす倣いは ずっと昔から 街の音を 両腕に囲って寝につく
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