絵の家

今月の詩

2月の詩

「樹」

                             伊藤 阿二子
水面に魚が跳ぶ
繰り返し場所を変えて 跳ぶ
夜来の風雨で上流から流れ着いた枯れ枝や
プラスチックの容器や
大きなドラム缶まで 散乱のなか
昨日までの草地に現れ 屹立する一本の樹

遠い山の水際に育っていたそれが
嵐の夜
地面と共に崩れ落ちて
枝も根元も押し流されて
河口にまで辿り着き
岸に打ち寄せられ
日ごと繰り返される大空の一日の終焉
燃え立つ空にあかあかと染まった河面に影を映し
残された命を支えている


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