伊藤 阿二子
夕日を浴びた水面に魚が跳ぶ
繰り返し場所を替えて跳ぶ
昨日の風雨で上流から流れ着いた枯れ枝や
プラスティックの容器や
おおきなドラム缶まで 散乱の中
昨日までの草地に現れ屹立する一本の樹
遠い山の水際に育っていたそれが
嵐の日
岸の地面と共に崩れ落ちて
枝も根元も押し流されて
河口にまで辿り着き
岸に打ち寄せられ
日ごと繰り返される大空の一日の終焉
燃え立つ空に
あかあかと染まった水面に影を映し
残された命を支えている
ひたすらな樹の傍らに立ち
全身赤く染まりながら
なぜこのように 訳もなく
赦しを乞うひとのように
胸の奥底が痛むのか