伊藤 阿二子 岸辺に打ち寄せるさざ波の音 遠い街の騒音 ひと声叫び 頭上をよぎる野鳥の影 一日の行路を辿り 鱗雲の縁を輝かせ 太陽は いま遥かな山の端に隠れていく 季節を追いかけて吹く風はまだ冷たく 目の前に真っ直ぐ伸びる細い土手道が ひとりで生きることの気構えを促す 足下に根を張って咲く黄色の小花も 水中から身を捻って水面に躍り上がる魚も 頭上の鳥も それぞれが一つの命の限りを生きる そうして 川べりの今日が日暮れる
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