絵の家

今月の詩

6月の詩

「川辺を行く」

                             伊藤 阿二子
岸辺に打ち寄せるさざ波の音
遠い街の騒音
ひと声叫び 頭上をよぎる野鳥の影
一日の行路を辿り 鱗雲の縁を輝かせ
太陽は いま遥かな山の端に隠れていく

季節を追いかけて吹く風はまだ冷たく
目の前に真っ直ぐ伸びる細い土手道が
ひとりで生きることの気構えを促す

足下に根を張って咲く黄色の小花も
水中から身を捻って水面に躍り上がる魚も
頭上の鳥も
それぞれが一つの命の限りを生きる
そうして
川べりの今日が日暮れる


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