絵の家

今月の詩

5月の詩

「声」

                             伊藤 阿二子
明け方の浅くなった眠りのなかで
ふと囁きかけてくる声がする

 それで 良か
 あんたが 良か
聞き覚えのある 皺枯れた あのひとの

ひとと比べられることに挫けたときに
耳元にそっと甦る

 ん? と問い返すと
眼を細めて ただ笑みを浮かべて

最終章の今も
阿蘇の裾野に広がる青草に抱かれ
一緒に眺めた雲の眩しさが甦る


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